図解
図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)
自然の法則ではなく、磁石の針が北を指すことなどから広まった習慣だから。
教室の地図も、スマホの地図も、たいてい上が北ですね。「地図は北が上」は世界の決まりのように思えます。でも、これは自然の法則ではなく、人間が長い時間をかけて広めた習慣なのです。
地図づくりの専門機関である国土地理院は、「上が北」になった理由に定説はないと説明しています。そのうえで、昔は磁石を使って土地をはかっていたので、針が北を指すことが下地になったという説や、北極星を使って方角を知るときに便利だからという説をしょうかいしています。
日本にも、江戸時代より前に作られた日本全図をまとめて「行基図」とよぶ古い地図があります。地図の向きは、作られた時代や場所で決まるものです。国土地理院によると、南半球のオーストラリアでは、上が南の地図が作られたこともあるそうです。
今でも、北が上でない地図はあります。駅や観光地の案内板は、見ている人の前の方向を上にして描かれることが多いのです。
地図の向きは、使う人が分かりやすいように決めるもの。次に案内板を見たら、どちらが上か調べてみましょう。
「地図は北が上」は自然法則ではなく慣習である。国土地理院はウェブサイトのQ&Aで、地図の上方が北になった理由についての定説はないと明言したうえで、磁石を用いて測量を行っていた経緯と磁石の針が北を指すことが下地となったという説、上方が北の地図は北極星を利用するとき便利だからという説を紹介している。国立国会図書館のレファレンス回答も、なぜ地図は北を上とするようになったのかについて定説はないと述べる。
現代の地形図は北方の緯線を上辺とすることになっているが、観光案内板は実際の地形と表示方向を合わせ、前方が上である。行基図とは江戸時代以前につくられた日本全図の総称であり、地図の向きは時代と目的で決まる。国土地理院が紹介するように、南半球のオーストラリアでは上方が南の地図が作られたこともある。
北が上なのは地球の性質ではない。使う人にとって便利な向きが、時代と場所ごとに選ばれてきた結果なのだ。
仕組みの科学
地球には「上」がない。宇宙空間に浮かぶ球体には、どの方向を上に描くべきかを決める物理的な根拠は存在しない。したがって、平面の地図でどちらを上にするかは、人間が決める約束事である。国土地理院はこの点を率直に認め、地図の上方が北になった理由についての定説はないと述べている。そのうえで挙げられている説は二つある。一つは、かつて磁石を用いて測量を行っていた経緯と、磁石の針が北を指すことが下地になったという説。もう一つは、上方が北の地図は北極星を利用するとき便利だからという説だ。
どちらの説も、方角を知る道具と地図の向きが結びついている点で共通している。磁石の針が指す方向を基準に土地を測れば、測った結果を紙に写すときも同じ方向を基準にするのが自然だ。北極星は北の空でほとんど動かない星であり、夜に方角を確かめる目印として使われてきた。北を上にした地図は、こうした道具や目印と向きが揃うため、実地で使いやすかったと考えられる。
ただし、現代の地図がすべて北を上にしているわけではない。国立国会図書館のレファレンス回答によれば、地形図は北方の緯線を上辺とする一方、駅や街中の観光案内板は実際の地形と地図の表示方向を合わせ、前方が上である。目的が「地形を正確に記録すること」から「その場にいる人を案内すること」に変わると、最適な向きも変わる。地図の上下は、用途に応じて設計される要素なのである。
歴史と発見
日本の古地図に目を向けると、地図が時代ごとの産物であることがよく分かる。ジャパンサーチの解説によれば、行基図とは江戸時代以前につくられた日本全図の総称である。近代的な測量に基づく現在の地形図が北方の緯線を上辺とするのに対し、行基図は測量の方法も作る目的も異なる時代の地図であり、現代の約束事をそのまま当てはめることはできない。北が上という慣習がいつ定着したのかについても、国土地理院が述べるとおり定説はない。
西洋の世界図にも歴史の層がある。文化庁の文化遺産オンラインには、室町時代にあたる1493年の『世界年代記』に収められたプトレマイオスの世界図が、ヨーロッパで活版印刷が始まった15世紀末の、現存する西洋初期印刷地図の一つとして紹介されている。さらに1587年に作成されたメルカトル世界図も収蔵されており、左側が西半球、右側が東半球で、右端中央に日本が描かれている。メルカトルは1512年から1594年を生きた地図製作者で、この世界図の様式はのちの世界地図に大きな影響を与えた。
古代から近世にかけて、地図の向きは製作者の世界観や目的によってさまざまだった。国土地理院が「定説はない」と述べるのは、北を上にする様式に単一の発明者や決定の瞬間を特定できないからである。磁石を使った測量の経緯や北極星の利用といった複数の説が並び立ち、どれか一つに絞れないまま、北が上の地図が世界に広まっていったのだ。
もう一歩先
「北が上」が慣習だと分かると、地図は世界をそのまま写したものではなく、作り手の視点で切り取った表現だという見方ができるようになる。国土地理院が紹介するように、南半球のオーストラリアでは上方が南の地図が作られたこともある。上下を入れ替えただけで、世界の中心に見える場所も、端に見える場所も変わる。地図の向きは、それを見る人の世界の感じ方に静かに影響しているのだ。
実用の場面では、向きを固定しないことが役に立つ場合も多い。国立国会図書館のレファレンス回答が指摘するように、観光案内板は実際の地形と表示方向を合わせ、前方が上である。スマートフォンの地図アプリにも、進行方向を上にする表示モードがある。自分が向いている方向と地図の上が一致していれば、右に曲がるべきか左に曲がるべきかを頭の中で変換する手間が省ける。北を上に固定した地図と、前方を上にした地図は、それぞれ得意な場面が違う。
家庭でできる観察としては、身の回りの地図を集めて上がどちらかを調べてみるとよい。教科書の地図、駅の案内板、避難経路図、ゲームの地図など、向きの決め方はさまざまだ。北が上でない地図を見つけたら、なぜその向きが選ばれたのかを考えてみる。行基図の時代と、私たちの北が上の世界のあいだには、地図を作る目的と技術の違いが横たわっている。
🌱 ためしてみよう!3択クイズ
本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。
Q1. 「地図は北が上」についてただしいのはどれ?
Q2. 国土地理院がしょうかいしている説はどれ?
本文にあるとおり、国土地理院は昔は磁石を使って土地をはかっていたので針が北を指すことが下地になったという説や、北極星を使うときに便利だからという説をしょうかいしています。太陽は北からはのぼりません。
Q3. 国土地理院によると、上が南の地図が作られたことがある国は?
本文にあるとおり、国土地理院によると、南半球のオーストラリアでは上が南の地図が作られたこともあるそうです。地図の向きは作られた時代や場所で決まるもので、北が上は自然の法則ではなく習慣なのです。
👤 大人のちょっとした雑学
国土地理院も「定説はない」と明言
地図づくりの専門機関である国土地理院のQ&Aには、地図の上方が北になった理由についての定説はありません、と書かれている。磁石を用いた測量の経緯や北極星を利用する便利さは、あくまで説として紹介されているにすぎない。
地形図は北の緯線が上辺と決まっている
国立国会図書館のレファレンス回答によれば、地形図は常にその北方の緯線を上辺とする。一方で観光案内板は実際の地形と地図の表示方向を合わせ、前方が上。同じ地図でも、記録用と案内用では向きの決め方がまったく違う。
1587年のメルカトル世界図に描かれた日本
文化庁の文化遺産オンラインに収蔵されている1587年作成のメルカトル世界図は、左側が西半球、右側が東半球で、右端中央に日本が描かれている。1512年から1594年を生きたメルカトルの世界図は、日本を世界の端に置いていた。
🔬 とことん深掘り:読書ガイド
読み順ガイド(やさしい→専門)
- 地図の図鑑(児童向け・地図記号と方位のきほん編)
方位・縮尺・地図記号という地図の約束事を一通り知る段階。北が上というのも約束事の一つだと気づく土台になる。 - 地図と測量の入門書(国土地理院の地形図の読み方を中心に)
地形図がどのように作られ、なぜ北方の緯線を上辺とするのかを、測量の手順から理解する。慣習が技術と結びついていることが分かる。 - 地図の文化史・世界地図の歴史に関する概説書
行基図やプトレマイオス、メルカトルといった古地図を時代順にたどり、地図の向きや中心が世界観とともに変わってきたことを学ぶ。 - 地図学・地理情報科学の専門書
投影法や座標系の数学的な扱いを学び、平面の地図が球面の地球をどう歪めているかを定量的に理解する。向きの問題が投影法の問題とつながる。
さらに進む方向
もっと詳しく:くらべてみる
- 行基図(江戸時代以前)日本全図の総称(ジャパンサーチ)
- プトレマイオスの世界図(1493年印刷)西洋初期印刷地図の一つ
- メルカトル世界図(1587年)左が西半球・右が東半球・右端中央に日本
- 現代の地形図北方の緯線を上辺とする
- 観光案内板前方が上。実際の地形と向きを合わせる
- オーストラリア上が南の地図が作られたこともある
ことばのメモ
- 定説
- 多くの人が正しいと認める説
- 測量
- 土地の位置や高さをはかること
- 行基図
- 江戸時代以前の日本全図の総称
- 緯線
- 地球を東西に横切る線
- 北極星
- 北の空でほぼ動かない星
よくある質問
地図の上が北なのは決まりなの?
昔の日本の地図も北が上だったの?
北が上でない地図は今もあるの?
地形図はどの向きで描くの?
学びのタネ
この問いに関連する本・実験・サービスのご紹介です。
家でできること
- 駅や公園の案内板を見つけたら、上がどの方角か方位磁石で確かめ、北が上かどうかを記録してみよう。
- 教科書の日本地図を上下さかさまにして眺め、どこが中心に見えるか、ふだんと印象がどう変わるか話し合ってみよう。
- 文化遺産オンラインでメルカトル世界図やプトレマイオスの世界図を検索し、日本がどこにどんな形で描かれているか見てみよう。
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出典・参考文献
- 国土地理院地図(数値地図)の一般的事項に関するQ&A 参照 2026-09-11
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース地図は北が上とは限らないのか 参照 2026-09-11
- ジャパンサーチ(国立国会図書館)行基図 参照 2026-09-11
- 文化庁 文化遺産オンラインメルカトル世界図 参照 2026-09-11
- 文化庁 文化遺産オンラインプトレマイオスの世界図 参照 2026-09-11
出典・正確性ポリシー:詳しく読む
本文にあるとおり、地図の上が北なのは自然の法則ではなく、人間が長い時間をかけて広めた習慣です。国土地理院も、上が北になった理由に定説はないと説明しています。法律で決められているわけでもありません。