汗はどうして出るの?

公開:2026-07-17 更新:2026-07-17 読了 約6分

図解

1 STEP 1 体温が上がる(運動・気温・環境) 2 STEP 2 脳の視床下部が体温上昇を感知 3 STEP 3 自律神経を経由してエクリン汗腺に信号 4 STEP 4 汗が皮膚表面で蒸発し気化熱を奪う 5 STEP 5 皮膚と血液が冷やされ深部体温が下がる 6 STEP 6 水分・塩分を補給しないと熱中症のリスク

図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)

体温が上がりすぎないように、水を出して熱をにがしているから。

夏の運動場で走ったあと、ひたいや背中がじっとりぬれていることがありますね。これが「汗」です。汗は、体の中の水がひふのあなから外に出てきたもの。じつはこれ、私たちの体を冷やすためのすごい仕組みなんですよ。

人の体は、なかがだいたい36〜37度になるようにいつも保っています。運動したり暑いところにいたりすると、体の中で熱がふえて、そのままだと体温がどんどん上がってしまいます。そこで大かつやくするのが汗。ひふの上でじょうはつするとき、まわりの熱をうばっていくのです。この「じょうはつでうばう熱」を、大人のことばで「気化熱」といいます。

お風呂上がりに体をふかないでいるとぞくっとする、あの感じと同じ仕組みです。ぬれた体から水がじょうはつして、体の熱がにげていきます。

人はほかの動物とくらべても、じょうずに汗をかいて体温を調節できる動物なんですよ。だから、日なたを長く歩いたり、走り続けたりできます。ただし気温が高い日は、汗としっしょに体の水分もどんどん出ていきます。熱中症ねっちゅうしょうにならないよう、環境省は「こまめな水分ほきゅう」と「すずしい所での休けい」をよびかけています。汗は、体からの「そろそろ休もう」というサインでもあるのですね。

汗は体温調節の主役だ。新潟大学や名古屋大学の研究解説によれば、人の体は視床下部の体温調節中枢が中心となって、皮膚血管の拡張と発汗によって深部体温を約37度に保っている。汗が皮膚上で蒸発するとき、水1グラムあたり約2.4キロジュールの気化熱が奪われ、体表から効率的に熱が逃げる。これが「効率的発汗」の生理学的正体である。人は全身に約200〜400万個のエクリン汗腺をもち、動物界でもトップクラスに発汗量が多い。この能力によって長時間の歩行や走行が可能になり、進化的にはヒトの持久狩猟仮説を支える要素とされる。ただし高温多湿環境では汗の蒸発が追いつかず、熱中症のリスクが急速に高まる。環境省の熱中症予防情報サイトは、暑さ指数WBGTと警戒アラートで危険度を可視化し、水分補給・涼しい環境での休憩を呼びかけている。

仕組みの科学

汗による体温調節は精緻なフィードバック系だ。脳の視床下部にある体温調節中枢が、深部体温をおよそ37度に保つよう働いている。中枢が体温上昇を感知すると、自律神経のうち交感神経を介してエクリン汗腺に信号を送り、汗を分泌させる。エクリン汗腺は全身の皮膚に約200〜400万個分布し、成分の大部分は水で、ナトリウムイオンや塩化物イオンなどの電解質が含まれる。汗が皮膚表面で蒸発すると、水が液体から気体になる際に周囲から熱を奪う気化熱が働き、皮膚温度が下がり、そこを流れる血液も冷やされて全身の体温上昇が抑えられる。名古屋大学中村研究室の解説によれば、視床下部を中心とする温度情報の統合と自律神経出力の制御メカニズムは、近年の研究で神経回路レベルで解明が進んでいる。汗が単に「出る」のではなく、複数の受容器・中枢神経・自律神経・汗腺・血管が協調する統合系である点が、体温調節の科学の面白いところだ。運動時には筋肉の発熱で内部熱産生が数倍にはね上がり、この統合系が全力で作動して深部体温の急上昇を防いでいる。

歴史と発見

発汗と体温調節の科学は十九世紀の生理学の発展とともに整えられてきた。フランスの生理学者クロード・ベルナールが提唱した「内部環境の恒常性」の概念、続くアメリカのウォルター・キャノンが名付けた「ホメオスタシス」は、体温を含む生体の一定性を科学的に位置づけた基礎概念である。二十世紀に入るとエクリン汗腺の分布密度や、能動汗腺数が地域・年齢・鍛錬状況で異なることが明らかになり、暑熱順化のトレーニングによって発汗能力が改善する現象も報告された。新潟大学ウェブマガジンEvergreenの解説では、発汗による体温調節機能が運動科学・熱中症対策・衣料開発などに応用されている研究の現状が紹介されている。日本では夏季の暑熱環境下での作業安全や熱中症対策が公衆衛生上の重要課題となり、環境省が2000年代以降に熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)を運用、暑さ指数WBGTと警戒アラートで危険度をリアルタイム公表するようになった。実験室での生理学から街頭の防災まで、発汗研究は現代日本の暮らしを支える科学として発展を続けている。

もう一歩先

汗の科学は温暖化時代の重要研究テーマでもある。気候変動で日本の夏の平均気温と極端高温の頻度が上昇し、熱中症搬送者数は毎年数万〜十数万人規模で推移している。環境省と厚生労働省は暑さ指数WBGTを軸に、屋外作業やスポーツ・学校活動の中止基準・水分補給基準を数値で示すガイドラインを整備してきた。医療の視点では、汗腺機能の低下や自律神経障害で発汗が乱れると熱中症リスクが跳ね上がるため、高齢者や小児は特別な注意が必要になる。汗腺の細胞レベル研究では、大阪大学などが汗腺の収縮メカニズムを分子レベルで解明し、新たな制汗成分の発見にもつながっている。学術的には、汗と体温調節は生理学・環境医学・スポーツ科学・材料工学(機能性衣料)が交差する総合研究領域で、都市のヒートアイランド対策や気候変動適応にも直結する。汗は「かくと恥ずかしいもの」ではなく、私たちが動物として活動できる強力な冷却装置なのだ。夏の暑さの中で汗をかいたら、それは体が正しく働いているサイン。汗の意味を知ることは、自分の体と気候変動時代の暑さに賢く付き合う第一歩になる。

🌱 ためしてみよう!3択クイズ

本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。

Q1. 汗が体を冷やすのはどんな仕組みでしょう?
こたえ:蒸発する時に気化熱で熱を持ち去る
汗が皮ふの上で蒸発する時、水が水蒸気になるために必要な熱をまわりからうばいます。この気化熱で皮ふが冷やされ、体温が下がるのです。
Q2. 汗を出すよう命令する脳の場所はどこでしょう?
こたえ:視床下部
脳の中の視床下部という場所に、体温を一定に保つ働きの中枢があります。体温が上がると、ここが自律神経を通じて汗腺に「汗を出せ」と命令します。
Q3. たくさん汗をかいた時に補給するとよいものはなんでしょう?
こたえ:水と塩分の両方
汗には水だけでなくナトリウムなどの塩分もふくまれています。たくさん汗をかいたあとは水分と塩分の両方をおぎなうことが、環境省からも推奨されています。

👤 大人のちょっとした雑学

人は動物界の「汗かきチャンピオン」

エクリン汗腺で全身から水を出せる動物は限られており、人は特に発汗量が多い。この能力があるからこそ長時間走り続けられ、進化的にはヒトの持久狩猟仮説を支える鍵と考えられている。

訓練で汗腺は「賢くなる」

暑熱順化の運動を続けると、汗が薄くなり塩分の再吸収効率が上がることが知られている。同じ運動量でも発汗タイミングが早まり、体温上昇を抑える能力が向上する。

WBGTは黒球温度で決まる

環境省が公表する暑さ指数WBGTは、気温だけでなく湿度・輻射熱(黒球温度)・気流を組み合わせた指標。体感に近い数値で、屋外運動の中止基準として国際的に採用されている。

🔬 とことん深掘り:読書ガイド

読み順ガイド(やさしい→専門)

  1. からだのふしぎ図鑑(子ども向け)
    汗腺と体温調節の全体像をイラストで理解し、視床下部の役割を掴む土台になる。
  2. 生理学入門の一般向け新書
    自律神経・ホメオスタシスの概念を数式に頼らず理解し、汗の仕組みを筋道で追う。
  3. 運動生理学・環境生理学の大学教科書
    発汗量・電解質バランス・暑熱順化を定量的に扱い、熱中症予防の科学的根拠を学ぶ。

さらに進む方向

  • 自律神経系・視床下部の神経科学へ進む
  • スポーツ科学・暑熱順化トレーニング理論に広げる
  • 気候変動と公衆衛生(都市ヒートアイランド・熱中症疫学)へ接続する

もっと詳しく:しくみのながれ

  1. STEP 1
    体温が上がる(運動・気温・環境)
  2. STEP 2
    脳の視床下部が体温上昇を感知
  3. STEP 3
    自律神経を経由してエクリン汗腺に信号
  4. STEP 4
    汗が皮膚表面で蒸発し気化熱を奪う
  5. STEP 5
    皮膚と血液が冷やされ深部体温が下がる
  6. STEP 6
    水分・塩分を補給しないと熱中症のリスク

ことばのメモ

気化熱
水が水蒸気になる時にうばう熱
エクリン汗腺
全身の皮ふにある汗を作る器官
体温調節
体温を一定にたもつはたらき
視床下部
体温をコントロールする脳の場所
暑さ指数
熱中症の危険度をあらわす数字

よくある質問

汗はどうしてしょっぱいのですか?
汗は水だけでなくナトリウムなどの塩分をふくんでいるためです。たくさん汗をかいたら水分と塩分の両方をおぎなうことが、熱中症予防で環境省からもすすめられています。
汗をかかない人は体温をどう調節するのですか?
汗腺の働きが弱い人は皮膚血管の拡張などで熱を逃がしますが、高温環境では熱中症になりやすい状態です。エアコンや涼しい服装で環境から工夫することが特に大切になります。
運動で汗をかくのは体にいいことですか?
適切な運動での発汗は暑熱順化を助け、汗腺の働きを高めます。ただし気温や湿度が高い日は無理をせず、環境省のWBGT情報を確認しながら休憩と水分補給を優先してください。
同じ運動でも人によって汗の量がちがうのはなぜですか?
能動汗腺の数や体重・体表面積・暑熱順化の程度で発汗量は異なります。鍛錬されたスポーツ選手は効率よく汗をかけるようになり、体温上昇を抑えやすくなると報告されています。

学びのタネ

この問いに関連する本・実験・サービスのご紹介です。

家でできること

  • 運動前後で体重をはかり、どれくらい汗で体重が減ったかを記録してみよう。
  • 環境省の熱中症予防情報サイトを開き、今日のWBGT指数と警戒レベルを家族で確認しよう。
  • 水と塩分の入った麦茶やスポーツドリンクを、水だけの場合と比べて味わってみよう。

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出典・参考文献

  1. 新潟大学発汗による体温調節機能のメカニズム解明 参照 2026-07-17
  2. 名古屋大学 医学系研究科体温調節の仕組み(研究成果) 参照 2026-07-17
  3. 環境省 熱中症予防情報サイト熱中症の予防方法と対処方法 参照 2026-07-17

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