図解
図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)
レム睡眠中に脳が記憶を整理し、その活動が夢として体験されるから。
ねむっているあいだ、わたしたちはよく夢を見ます。ふしぎな話や、こわい場面や、うれしい出来事…目がさめると内容をわすれてしまうこともありますね。この夢は、いったいなぜ見るのでしょうか。
じつは、ねむりには2しゅるいあります。1つは体も脳も休む「ノンレム睡眠」、もう1つは体は休んでいるのに脳がよく動いている「レム睡眠」です。夢の多くはこの、レム睡眠のときに見ていると考えられています。
レム睡眠のあいだ、脳は昼間に見たり聞いたり体験したことをせいりして、大切な記おくをより深く残す作業をしていることが、筑波大学のけんきゅうでわかってきました。この作業のなかで、いろんな記おくのかけらがまじり合って、ふしぎな物語のように感じられるのが夢の正体ではないかと考えられています。
だから夢は「脳のかたづけ時間」のような一面があるのですね。楽しかったことも、こわかったことも、脳はねむっているあいだにゆっくり整理して、明日のじゅんびをしているのですよ。たまにへんな夢を見ても、それは脳ががんばって働いているしるしなのです。
夢の多くはレム睡眠中に生じると考えられている。レム睡眠は体の筋肉は弛緩する一方で、脳波は覚醒時に近い活発なパターンを示す独特の睡眠段階だ。人は一晩に約90分の周期でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、明け方に近づくほどレム睡眠の比率が高まる。夢の内容を覚えていやすいのは、レム睡眠から目覚めた直後だ。
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)の研究では、レム睡眠が脳の発達や学習・記憶の定着に貢献する可能性が示されている(2015年発表)。2020年には、恐怖経験時に活動したニューロンがレム睡眠時に再活動し、これが夢を見る仕組みに関連する可能性が示唆された。ヒトの脳は睡眠中も驚くほど活発に情報を整理しており、夢はその副産物として体験されるのだ。
仕組みの科学
睡眠は大きく「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」に分けられる。ノンレム睡眠は脳波が徐々に遅くなり、体も脳も深く休む段階。一方レム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep)は、名前のとおり眼球が急速に動き、脳波は覚醒時に近い活発なパターンを示すが、姿勢を支える筋肉は弛緩している。夢の多くはこのレム睡眠中に生じ、しかも起きた直後ほど内容を覚えていやすい。
夢の内容がしばしば奇妙なのは、レム睡眠中の脳の情報処理モードに理由がある。この段階では、記憶の一時保管を担う海馬と、感情処理に関わる扁桃体が活発になる一方、論理的思考を司る前頭前野の活動が相対的に低下する。そのため、記憶の断片同士が論理を超えて結びつき、感情の強い映像として体験される。
筑波大学の林悠らのチームは、マウスでレム睡眠のオン・オフを人工的に操作する実験系を作り、レム睡眠がノンレム睡眠中の脳回路の再編成(デルタ波を介した神経活動)を促す役割を持つことを明らかにした(2015年)。夢は、この脳の裏方作業を主観的にモニタリングしている状態だと解釈できる。
歴史と発見
夢の科学的研究は20世紀に本格化した。1953年、米シカゴ大学のクレイトマンとアセリンスキーが、睡眠中に眼球が急速に動く時期があることを発見し、これを「レム睡眠(Rapid Eye Movement Sleep)」と名付けた。被験者をレム睡眠中に起こすと約80パーセントの割合で「夢を見ていた」と報告することから、夢とレム睡眠の関連が確立された。
20世紀後半には、脳波計(EEG)と機能的MRIの発達で、睡眠中の脳活動を可視化できるようになった。レム睡眠中の脳は、視覚野・海馬・扁桃体が覚醒時に近い水準で活動している一方、前頭前野の活動が低下していることが明らかになった。これが「夢はなぜ奇妙で感情的か」を説明する神経科学的根拠となっている。
日本では、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)が2012年に設立され、世界的な睡眠研究の中心の一つとなっている。2015年には林悠らのチームがレム睡眠のスイッチ細胞を発見し、レム睡眠を人為的に操作する道を開いた。2020年には、恐怖経験時に活動したニューロンがレム睡眠時に再活動することを発見し、夢と記憶定着の関係を新たに描き出した。夢の研究は今も進化を続けている。
もう一歩先
近年注目されているのが、「明晰夢(ルシッド・ドリーム)」の科学だ。夢の中で「これは夢だ」と気づき、意図的にストーリーを操作できる現象で、脳波を測定すると通常のレム睡眠とは異なる前頭前野の活性化パターンが観察される。訓練で明晰夢を見られるようになる人もおり、心理学・神経科学の研究対象となっている。
また、動物にも夢に似た現象があると考えられている。犬や猫が寝ている最中に足を動かしたり鳴いたりするのは、レム睡眠中に何かを経験している証拠と解釈されている。マウスの海馬記録では、日中に走った迷路を睡眠中に脳が再生する神経活動が観察されており、動物の夢の神経学的痕跡と考えられている。
テクノロジー面では、夢の内容を脳活動から読み取る研究も進む。京都大学の神谷之康らは、機能的MRIと機械学習を組み合わせ、被験者が見た夢の視覚イメージを高い精度で解読する成果を2013年に発表した。夢はもはや純粋な内面の現象ではなく、科学的に観察・記述できる対象になりつつある。夢の解明は、意識研究のフロンティアのひとつなのだ。
もっと詳しく:歴史と時系列
- 1953年米クレイトマン・アセリンスキーがレム睡眠を発見
- 1957年頃レム睡眠中に夢を見ることが実験で確認される
- 1990年代脳波・fMRIで睡眠中の脳活動が可視化
- 2012年筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)設立
- 2013年京大神谷らが機械学習で夢の視覚内容を解読
- 2015年筑波大IIISがレム睡眠のスイッチ細胞を発見
- 2020年IIISが恐怖記憶とレム睡眠中のニューロン再活動を発見
ことばのメモ
- レム睡眠
- 眼球が動き脳が活発な睡眠段階
- ノンレム睡眠
- 脳も体も深く休む睡眠段階
- 海馬
- 記憶の一時保管を担う脳の部位
- 扁桃体
- 感情の処理に関わる脳の部位
- 明晰夢
- 夢の中で夢だと気づけている状態
よくある質問
なぜ夢を覚えていないことが多いのですか?
夢を見ない人はいますか?
なぜ夢の内容はふしぎで飛躍していますか?
動物も夢を見ますか?
学びのタネ
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家でできること
- 起きた直後に夢日記をつけて、どんな内容だったか記録してみよう。1週間続けると変化が見えてくる。
- 家族の寝ているペットの様子を観察し、レム睡眠らしき動きが見られるか記録してみよう。
- 筑波大学IIIS(国際統合睡眠医科学研究機構)のプレスリリースで、夢と記憶の最新研究を読んでみよう。
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出典・参考文献
- 筑波大学夢のスイッチが明らかにする夢を見る理由 レム睡眠の意義を初めて科学的に証明 参照 2026-07-23
- 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)睡眠中の脳の再生能力が記憶を定着させる 怖い体験が夢でよみがえる仕組み 参照 2026-07-23
- 東京大学 大学院理学系研究科夢を生じるレム睡眠のスイッチを担う細胞の正体を解明 参照 2026-07-23
- 筑波大学レム睡眠を誘導する神経回路を解明 参照 2026-07-23
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