図解
図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)
天体がぶつかったあとが、大気のない月ではそのまま残っているから。
満月をよく見ると、丸いくぼみがたくさん見えます。あれがクレーターです。宇宙航空研究開発機構によると、月の表面には天体がぶつかってできたクレーターがたくさんあります。月には空気がほとんどありません。だから、ふきつける風も、あらい流す雨もないのです。ぶつかったあとは、そのままずっと残ります。地球ではどうでしょうか。地球には空気があり、水もあります。土地も長い時間をかけて動きます。だから古いあとは、だんだん消えていきます。月の顔にあるでこぼこは、大昔の記録がそのまま残ったものなのです。月には明るいところと暗いところがあります。明るいところは「高地」、暗いところは「海」とよばれます。海といっても水はありません。溶岩が流れこんで、平らになった場所です。日本の月探査機「かぐや」は、そのようすをくわしく調べました。かぐやは月のまわりを回りながら、地形や重力をくわしく調べました。おかげで、月の表と裏のようすがちがうこともわかってきました。今夜の月で、明るい場所と暗い場所をさがしてみましょう。
月の顔にあるあばたは、消えない傷である。空気がなければ風は吹かず、雨も降らない。大地を作り替えるプレートの動きもない。だから大昔の一撃も、ずっと後にできた小さな穴も、同じ場所に並んで残り続ける。自分の履歴を絶えず消してしまう地球とは対照的だ。暗く見える部分に水はない。日本天文学会の天文学辞典によれば、そこは内部から噴き出した溶岩が巨大な衝突跡を満たしてできた玄武岩の平原で、表面のおよそ五分の一を占める。厚みは一から二キロほどで、その下には白っぽい高地の地殻が横たわる。年代測定とクレーターの数え上げから、この溶岩の大半は三十五億から四十億年前に流れ出したと分かっている。うさぎの模様に見えていたものは、太古の火山活動が描いた地図だったわけだ。傷を残す天体と、傷を消す天体。両者を分けているのは大気の有無である。
仕組みの科学
クレーターが月に残り、地球に残りにくい理由は、環境の差にある。宇宙航空研究開発機構が公開する月の基礎データによれば、月の重力は地球の約六分の一で、ほとんど大気がないため、昼夜の温度差が非常に大きくなる。月の赤道付近の観測では、昼は百十度、夜は氷点下百七十度と、その差は二百度以上もある。大気がないということは、風による削り取りも、雨による流失も起こらないということだ。衝突が刻んだ地形は、次の衝突が上書きするまで保たれる。一方、月面は一様ではない。同機構の解説では、表側の明るい部分は高地、暗い部分は海と呼ばれ、地球から見えない裏側には隕石の衝突でできたクレーターがたくさんあると説明されている。日本天文学会の天文学辞典によれば、斜長石を多く含む岩石からなる高地に対して、海は月の内部から噴出して巨大衝突盆地を埋めた玄武岩質の溶岩からなる。海は月面の二十パーセントほどを覆い、大部分は表側に存在して裏側には少ない。海を埋める玄武岩の厚さは一から二キロメートルほどで、その下には高地の地殻が存在する。傷跡と、それを埋めた溶岩。月の顔は二層構造なのである。
歴史と発見
月面の年代を読み解く手がかりも、クレーターそのものにある。宇宙航空研究開発機構の解説によれば、月の地域の年代はクレーター年代学という手法で推定される。これは、クレーターの数が多く、個数密度が高いほど、その場所が古いという考え方だ。新しい溶岩で覆われた面は傷が少なく、古い面ほど傷だらけになる。時計の針の代わりに、穴の数を数えるのである。日本天文学会の天文学辞典によれば、アポロ探査が取得した岩石の年代測定とクレーター年代学から、海の玄武岩マグマの噴出の多くは三十五億から四十億年前に起きていること、最も若いものでは十三億年前の火山活動があったことが分かっている。日本の月周回衛星かぐやは、この年代像を裏側で塗り替えた。同機構の成果報告によれば、これまで月の裏側の海では三十数億年前に活動が終わっていると考えられていたが、かぐやによって二十五億年前までマグマの噴出活動を行っていたことが分かった。地形カメラがとらえたモスクワの海付近では、クレーターの個数密度から年代を推定した結果、比較的最近まで形成された領域があると判明している。
もう一歩先
クレーターは地形であると同時に、月の内部を映す窓でもある。宇宙航空研究開発機構の成果報告によれば、直径二百キロメートルを越える大型のクレーターがある場所は、月では盆地と呼ばれる。そして内部から溶岩が噴き出し、くぼ地を埋めて平原にした場所が海である。かぐやはリレー衛星を用いて月全体の重力分布を観測し、表と裏では異なる重力異常があることを明らかにした。重力異常とは、それぞれの地点での重力値から月全体の平均の重力値を引いた差のことだ。表側の海には重い物質が分布しており、マスコンと呼ばれる正の広がった重力異常が見られる。天体衝突で内部が高温高圧になって変形しやすくなり、マントルが盛り上がって、さらに密度の高い溶岩が噴出した結果だと説明されている。つまり大きな衝突は、地表を凹ませただけでなく、内部構造まで作り替えたのだ。観察の実践としては、双眼鏡があれば十分に楽しめる。満月よりも半月のころ、明暗の境目あたりを見るとよい。影が長く伸びて、くぼみの立体感が際立つ。同じ場所を毎晩追えば、光の当たり方で見え方がどれほど変わるかも分かる。
🌱 ためしてみよう!3択クイズ
本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。
Q1. 月のクレーターが消えずに残るのはなぜ?
Q2. 月の「海」には何がある?
天文学辞典によれば、月の海は月の内部から噴出して巨大衝突盆地を埋めた玄武岩質の溶岩からできています。水はありません。暗く見えるので、昔の人が海だと思って名前をつけたのです。
Q3. クレーターの数が多い場所は、どんな場所?
JAXAによると、月の年代は「クレーター年代学」という方法で調べます。クレーターの数が多く、個数密度が高いほどその場所が古いと考えられます。穴の数が時計の代わりになっているのです。
👤 大人のちょっとした雑学
月の海は月面の20%
天文学辞典によれば、海は月面の20%ほどを覆い、大部分は表側に存在して裏側には少ない。玄武岩の厚さは1-2kmほどで、その下には高地の地殻が存在する。私たちが「うさぎ」として親しんできた模様は、厚さ数キロの溶岩の分布図だったということだ。
かぐやが裏側の年表を書き換えた
JAXAの成果報告によれば、これまで月の裏側の海では30数億年前に活動が終わっていると考えられていたが、かぐやによって25億年前までマグマの噴出活動を行っていたことが分かった。日本の探査機が、月の火山史を10億年ぶん更新したことになる。
マスコン――衝突が内部を作り替えた証拠
かぐやは月全体の重力分布を観測し、表側の海に「マスコン」と呼ばれる正の重力異常を捉えた。天体衝突で内部が高温高圧になり、マントルが盛り上がって密度の高い溶岩が噴出した結果とされる。クレーターは表面の傷ではなく、内部改造の入口だったのだ。
🔬 とことん深掘り:読書ガイド
読み順ガイド(やさしい→専門)
- 月の地図帳(月面地形の写真集)
まず主要な海とクレーターの名前と位置を覚える段階。地名が入ると、以降の探査成果の記述がすべて具体的な場所の話になる。 - 月の科学(一般向け入門書)
起源説・内部構造・探査史を通しで俯瞰できる。アポロからかぐやまでの流れを押さえると、個々の発見の意味が分かる。 - 惑星地質学の教科書(衝突クレーターの形成論)
衝突の物理、クレーターの形態分類、盆地形成のメカニズムを扱う。クレーター年代学の前提が理解できる。 - 月惑星科学の専門書(マグマ活動と地殻進化)
海の玄武岩の年代分布とマントル進化を結びつける。表と裏の二分性という月最大の謎に正面から向き合える。
さらに進む方向
もっと詳しく:歴史と時系列
- 40〜35億年前海の玄武岩マグマの噴出が多く起きる
- 30数億年前裏側の海の活動は終わったと考えられていた
- 25億年前かぐやが裏側でマグマ噴出の継続を確認
- 13億年前最も若い火山活動があったとされる
- アポロ探査岩石の年代測定でクレーター年代学を較正
- 2007年月周回衛星かぐやが打ち上げられる
- 2009年主衛星かぐやが役目を終える
ことばのメモ
- クレーター
- 天体がぶつかってできたくぼみ
- 高地
- 月の明るく見える場所
- 海(月の)
- 溶岩がたまった暗い平地
- 玄武岩
- 溶岩が固まってできた黒い岩
- クレーター年代学
- 穴の数で年代を調べる方法
よくある質問
どうして地球にはクレーターが少ないの?
月の「海」には水があるの?
月の海はいつできたの?
クレーターの数で何が分かるの?
「かぐや」は何を発見したの?
学びのタネ
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家でできること
- 半月のころに双眼鏡で明暗の境目を見て、クレーターの影の長さをスケッチしてみよう。
- 月の写真を印刷して、明るい高地と暗い海を色ぬりで分けてみよう。海の広さが実感できるよ。
- 同じクレーターを数日つづけて観察し、光の当たり方で見え方がどう変わるか記録しよう。
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出典・参考文献
- JAXAもっと知りたい! 「月」ってナンだ!? 参照 2026-08-23
- 日本天文学会 天文学辞典海(月面の) 参照 2026-08-23
- JAXA「かぐや」のこれまでの主な科学的成果 参照 2026-08-23
出典・正確性ポリシー:詳しく読む
JAXAによると、月にはほとんど大気がありません。だから風で削られることも、雨で流されることもありません。ぶつかったあとがそのまま残るので、月の顔には大昔のきずがたくさん見えるのです。